データ企業のDatabricksが、1880億ドルの評価額で資金を調達すると発表した。日本円に直せば、二十兆円を大きく超える。ただ、この「1880億ドル」という値札を、誰が、どう決めたのか。そこを一度、確かめておきたい。
まず事実を並べる。Databricksは先週、1880億ドルの評価額で新しい資金調達に入ると発表した。主導するのは既存の投資家であるコーテューで、調達額はおよそ30億ドルと報じられている。まだ正式には完了しておらず、この夏のうちに締める見込みだという。今年2月に1340億ドルの評価額で調達したばかりだから、5か月で4割上がった計算になる。
事実はここまで。ここから、私がいつも探す「載っていない数字」の話をする。
非上場の会社の「評価額」は、株式市場でつく値段とは別ものだ。上場株なら、毎日たくさんの人が売り買いして値段が決まる。非上場の評価額は違う。いちばん高く払ってもいい一社が、ごく一部の株について「この値段でいい」と合意する。その一点を、会社全体に引き伸ばした数字が「評価額」だ。
Databricksの場合、動くお金はおよそ30億ドル。1880億ドルの、2%に満たない。つまり会社の98%は、今回の値札のつけ替えに参加していない。家にたとえるなら、一部屋を強気の隣人が高く買ったからといって、家全体がその割合で値上がりしたことにする――それが非上場の評価額の作られ方だ。
誤解しないでほしい。私はDatabricksが過大だと言っているのではない。事業は伸びているのだろう。言いたいのは、5か月で4割という値札の動きの速さは、事業の実力より、AIに払ってもいいと思う人の気分のほうを、よく映すということだ。今日の紙面は、国の秩序も技術の首位も、AIの話で埋まっている。1880億ドルは、その同じ熱を、値段という物差しで測っただけの数字だ。見出しとしては本物である。ただ、その値段で実際に売り買いされたのは、最後の2%だけだ。