先週、上海に29の国が集まり、一枚の協定に署名しました。世界人工知能協力機構(WAICO)――中国が音頭を取り、本部も中国に置く、AIのための新しい国際組織です。ほぼ同じ数日、中国の一つのAIが、コーディングの世界ランキングで首位に立った。別々のニュースに見えて、これは一枚の地図の話です。
今週の紙面は、世界地図を一枚広げます。ただし国境ではなく、AIの境界線を描いた地図です。
まず事実から。7月16日、上海で29の国が「世界人工知能協力機構(WAICO)」の設立協定に署名しました。中国の王毅外相が中国を代表して署名し、そのほかロシアやベラルーシ、ブラジル、ベネズエラが並び、残りの多くはアジアとアフリカの国々です。習近平国家主席は会議の開幕でこの新組織を発表し、「公正で公平な」AIのガバナンスを世界で築こうと呼びかけました。本部は、中国に置かれます。
世界が二つに畳まれるのは、初めてではない
こういう光景を、私たちは前に見ています。
二十世紀の半ば、世界は二つの秩序に畳まれました。一方に西側、もう一方に東側。それぞれが自分の同盟、自分の基準、自分の勢力圏を持ち、あいだに境界線が引かれた。冷戦です。今回のAIをめぐる分かれ方には、その構図と、よく似た匂いがあります。片側に、中国が主導する、条約と本部を持つ新しい組織。もう片側は、条約も本部もない、もっとゆるい秩序です。米国の輸出管理が計算資源の流れをせき止め、欧州の規制が使い方に枠をはめ、残りは企業と市場の競争に委ねられている。条約でまとめる中国側と、ルールと市場でまとめる西側。統治の作法からして、二つは噛み合いません。
署名した29カ国の顔ぶれを見ると、地図の読み方がもう一つ増えます。ロシアやベラルーシのように、もともと西側と距離のある国だけでなく、アフリカやアジア、中南米の途上国が多く並んでいる。彼らにとって、AIは欲しいけれど手の届きにくいものです。最先端の計算資源も、最上位のモデルも、その多くは西側の企業に握られ、輸出管理の網がかかっている。中国が差し出しているのは、その網の外側にある、もう一つの入り口です。国は理念ではなく、手に入るかどうかで動く。29の署名の何割かは、そういう現実的な計算の結果でしょう。
同じ数日、上海の会場の外では、もう一つの象徴的な出来事がありました。中国のAI企業が公開した新しいモデルが、コーディングの国際ランキングで首位に立ったのです。米国が計算資源の輸出を絞るなかで、です。詳しくは築山が二面で書いています。組織の署名と、ランキングの首位。政治と技術の両方で、片側の輪郭がくっきりしてきた週でした。
ただし、今回が冷戦と決定的に違う点
ここで、歴史をなぞるだけの記事にはしません。今回が七十年前と決定的に違う点を、一つだけ挙げます。
冷戦の二つの陣営は、経済的にほとんど別世界でした。西側と東側は、互いにほとんど売らず、買わなかった。ところが今回の二つの極は、互いの最大級の貿易相手です。中国のAIは、その多くが米国の設計した半導体の上で動いている。米国の製品は、その多くが中国の工場と資源に頼っている。境界線は引かれつつあるのに、二つの側は、同じ体の中で血管をつなぎ合ったままなのです。
だからこれは、冷戦の再放送ではありません。「切り離せないまま、二つに分かれようとする」という、前例のない引き裂き方です。完全には離れられない。かといって一つにもなれない。この矛盾が、これからのAIをめぐる交渉の、いちばん難しい芯になります。
読者にとって、これは遠い話ではありません。あなたが明日使うAIの道具が、どちらの秩序の作法で作られたか――データの扱い、止められ方、答えの偏り――が、少しずつ二通りに分かれていく。かつてインターネットで「スプリンターネット」と呼ばれた分断が、今度はAIで起きようとしている。地図の上の一本の線は、いずれ、あなたの画面の中にも引かれます。
29の署名は、その線の、最初のインクです。