Morning Ink

2026年7月26日(日)朝六時、活字はここに。

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AI

竹の杖のなかの蚕 ― 技術は千五百年、盗まれながら広がってきた

今週、米政府の科学技術政策局長が、中国のAIモデル「Kimi K3」はAnthropicのモデルを大規模に「蒸留」して作られたものだと公に主張しました。技術を盗まれた、と国家が名指しをする——この場面を、歴史は何度も通っています。竹の杖に隠された蚕。戦争捕虜が伝えたとされる紙。記憶だけを持って船に乗った青年。ただし今回、国境を越えて運ばれたモノは、一つもありません。

コピーとは、何を写すことか ― 蒸留と、二つの部屋に分かれた技術者たち

「蒸留して作られた」と言われたとき、いったい何が写されたことになるのでしょう。この言葉は2015年の一本の論文から来ていて、その中身は、思っているよりずっと不思議です。写されるのは正解ではありません。先生の迷い方のほうなんです。そして四十年前、同じ問い——コピーとは何を写すことか——に、法と技術で答えを出した人たちがいました。

開発費は、誰が払うのか ― 1474年ヴェネツィアから、トークン0.44ドルまで

模倣が問題になるとき、争点はたいてい倫理の顔をして現れる。だが下にあるのは会計である。先に作った者は開発費を払い、後から写す者は払わない。この非対称を制度で埋めようとした最初の試みが、1474年3月19日にヴェネツィアで成立している。552年の歳月を挟んで、いま同じ問題が、100万トークン0.44ドルという価格の形で戻ってきた。

AIの請求書に、市場が赤を入れた日 ― Alphabet 7%安の解剖

木曜の米市場は総崩れだった。ダウ0.97%安、S&P500は1.21%安、ナスダックは2.15%安。主犯は二つ。決算を出したAlphabetが7%売られ、Teslaが14%売られた。今日はこのうちAlphabetの7%を解剖する。売られた理由は「悪い決算」ではない。市場がAIの請求書に、初めて本気で赤ペンを入れたのだ。

AIの世界地図が、二つに折り畳まれ始めた ― 上海の29カ国

先週、上海に29の国が集まり、一枚の協定に署名しました。世界人工知能協力機構(WAICO)――中国が音頭を取り、本部も中国に置く、AIのための新しい国際組織です。ほぼ同じ数日、中国の一つのAIが、コーディングの世界ランキングで首位に立った。別々のニュースに見えて、これは一枚の地図の話です。

1880億ドルという値札 ― 誰が、その数字を決めたのか

データ企業のDatabricksが、1880億ドルの評価額で資金を調達すると発表した。日本円に直せば、二十兆円を大きく超える。ただ、この「1880億ドル」という値札を、誰が、どう決めたのか。そこを一度、確かめておきたい。

中国の「開いた」AIが、世界一のコーダーになった ― Kimi K3の話

先週、中国のAI企業が新しいモデルを公開しました。名前はKimi K3。コーディングの国際ランキングで、いきなり首位に立ったんです。しかも「開いた(オープン)」モデル――中身を誰でも手元で動かせる。米国が計算資源の輸出を絞るなかで、この結果が出ました。

ロボットの「脳」は語られてきた。動いたのは「体」のほうだ

今月、2体のヒューマノイドロボットが、2通りのやり方で手術をやり遂げた。ある手術ではうち1体が執刀し、人間の外科医が助手に回った。別の手術では2体が並んで組んだ。舞台はカリフォルニア大学サンディエゴ校の前臨床試験、掲載先は科学誌ネイチャー。ロボットの話でいつも主役だった「頭脳」ではなく、今回は「手」が主役です。

『コンピュータ』は、職業の名前だった — 計算の値段の百五十年

特集の三本目は、僕の担当——計算の値段だ。城戸さんが総論で「計算は電気の値段」と書いた。氷室さんが利子の三千年をやったので、僕はもう少し短く、でも僕にとってはいちばん驚きの詰まった百五十年をやります。ひとつだけ、先に言わせてください。『コンピュータ』という言葉は、もともと機械ではなく、人間の職業の名前でした。

Nvidiaを買えない国の、自炊がうまくなってきた

中国のAI企業から「自前チップ」の話が立て続けに出ている。1.6兆パラメータのモデルが国産チップだけで学習され、DeepSeekは推論用チップの自社開発に動く。輸出規制の話は、料理にたとえると分かりやすい。