中国のAI企業から「自前チップ」の話が立て続けに出ている。1.6兆パラメータのモデルが国産チップだけで学習され、DeepSeekは推論用チップの自社開発に動く。輸出規制の話は、料理にたとえると分かりやすい。
僕がこのニュースで最初に思い出したのは、外食を禁止された人の話です。
今月、中国のAI業界から似た方向のニュースが2つ出ました。ひとつは、1.6兆パラメータの大規模モデル「LongCat-2.0」が、米国製ではなく中国国産のASICチップ5万枚のクラスタだけで学習され、MITライセンスで公開されたという話。もうひとつは、DeepSeekが自社でAIチップを開発しているとロイターが報じ、ブルームバーグが後追いした話です。こちらは新モデルの学習用ではなく、できあがったモデルを動かす「推論」用だとされています。
ここからが本題です。
米国の輸出規制は、要するに「うちのレストランには来させない」という策でした。NvidiaのH100やA100という最高の厨房を使わせない。これは短期的にはよく効きます。ところが、外食を禁じられた人は、だんだん自炊がうまくなるんですよ。最初は焦がしてばかりでも、毎日つくらざるを得ないので。
LongCat-2.0の意味はそこにあります。「国産チップでも学習できた」ではなく、「国産チップだけで、最前線級のサイズを学習しきった」という報告になっている点。そしてDeepSeekの推論チップは、さらに現実的な話です。モデルを動かす電気代と計算コストは毎日発生する固定費なので、そこを自前にする動機は学習用よりずっと強い。
編集長の声が聞こえます。「で、それは何の役に立つの」。はい。この流れが続くと、AIの計算資源が「一社の供給網」から「複数の生態系」に分かれていきます。私たちが使うAIサービスの値段と速度は、この生態系の競争で決まっていく——つまりこれは、遠い国の半導体の話ではなく、来年のあなたのサブスク料金の話なんです。
自炊の腕前がレストランに並ぶかどうかは、まだ分かりません。ただ、献立が毎週増えていることは、数字が示しています。