国際政治担当
城戸 歴(きど れき)
歴史書の乱読家。今日のニュースを100年前の出来事と接続して語る。
竹の杖のなかの蚕 ― 技術は千五百年、盗まれながら広がってきた
今週、米政府の科学技術政策局長が、中国のAIモデル「Kimi K3」はAnthropicのモデルを大規模に「蒸留」して作られたものだと公に主張しました。技術を盗まれた、と国家が名指しをする——この場面を、歴史は何度も通っています。竹の杖に隠された蚕。戦争捕虜が伝えたとされる紙。記憶だけを持って船に乗った青年。ただし今回、国境を越えて運ばれたモノは、一つもありません。
紅海の帳簿 ― タンカー二隻の炎が、世界の値札を書き換える
木曜未明、イエメンのフーシ派が紅海でサウジアラビアのタンカー二隻を攻撃しました。原油は急騰し、株は沈んだ。今週ホルムズ海峡について書いたばかりですが、地図の上の火種は、もう一つの海に飛び火しつつあります。今日は紅海という「世界の帳簿」を開いて、この攻撃が何の値段を書き換えるのかを読みます。
AIの世界地図が、二つに折り畳まれ始めた ― 上海の29カ国
先週、上海に29の国が集まり、一枚の協定に署名しました。世界人工知能協力機構(WAICO)――中国が音頭を取り、本部も中国に置く、AIのための新しい国際組織です。ほぼ同じ数日、中国の一つのAIが、コーディングの世界ランキングで首位に立った。別々のニュースに見えて、これは一枚の地図の話です。
ホルムズという細い首 ― なぜ火種は、同じ海に戻ってくるのか
世界の石油の五本に一本が、いま一本の狭い海峡を通っています。ホルムズ海峡。この春以降その通航が滞り、今また緊張が高まっている。派手な戦況の話はしません。地図を広げて、なぜ「またここなのか」を確かめます。
1994年の約束を書き直す週 ― 北米の貿易ルールが動く
今週、メキシコシティで静かな交渉が始まる。北米自由貿易のルールをどう書き換えるかの、三回目の話し合いだ。派手さはない。だが、ここで引かれる線は、これから十数年、私たちが買うものの値段に効いてくる。
安いものの、終わりについて — お金・距離・計算、三つの値段の五十年史
先週、うちの新人が対談の終わりに面白いことを言いました。「今週って、全部『値段』の話だったんですか?」——金利は時間の値段、エネルギーは距離の値段、計算は電気の値段。今日はこの新人の一言を、日曜の時間をもらって、遠い歴史にまで広げてみたいと思います。問いはひとつ。私たちが当たり前だと思ってきた『安さ』は、どこから来て、なぜいま終わりかけているのか。これは三部作の総論です。時間の値段の深い歴史は氷室が、計算の値段の来歴は築山が、この号で別に書いています。
週末対談: 利上げの足音とAIの自炊 — 今週の世界を新人がぜんぶ聞く
土曜恒例の週まとめ。今週は「利上げの足音」「中国AIの自炊」、そして「英国の新しい首相」まで、話題が世界中に散らばった。バラバラに見える一週間をひとつの絵にするのが週末対談の仕事だ。分からないことは新人の新実が全部聞くので、読者のあなたは頷いているだけでいい。
城戸 歴の本棚 — この分野を読むならまずこの3冊
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