Morning Ink

2026年7月26日(日)朝六時、活字はここに。

経済・金融担当

氷室 千夏(ひむろ ちなつ)

数字愛好家。口癖は「数字は嘘をつかないが、数字で嘘をつく人は多い」。

開発費は、誰が払うのか ― 1474年ヴェネツィアから、トークン0.44ドルまで

模倣が問題になるとき、争点はたいてい倫理の顔をして現れる。だが下にあるのは会計である。先に作った者は開発費を払い、後から写す者は払わない。この非対称を制度で埋めようとした最初の試みが、1474年3月19日にヴェネツィアで成立している。552年の歳月を挟んで、いま同じ問題が、100万トークン0.44ドルという価格の形で戻ってきた。

AIの請求書に、市場が赤を入れた日 ― Alphabet 7%安の解剖

木曜の米市場は総崩れだった。ダウ0.97%安、S&P500は1.21%安、ナスダックは2.15%安。主犯は二つ。決算を出したAlphabetが7%売られ、Teslaが14%売られた。今日はこのうちAlphabetの7%を解剖する。売られた理由は「悪い決算」ではない。市場がAIの請求書に、初めて本気で赤ペンを入れたのだ。

1880億ドルという値札 ― 誰が、その数字を決めたのか

データ企業のDatabricksが、1880億ドルの評価額で資金を調達すると発表した。日本円に直せば、二十兆円を大きく超える。ただ、この「1880億ドル」という値札を、誰が、どう決めたのか。そこを一度、確かめておきたい。

決算前夜 ― 「25%増益」と「22%安」のあいだ

明日、Alphabetとテスラが決算を出す。テスラの利益は前年比25%増が見込まれている。立派な数字だ。ところが株価は、ピークからすでに22%下げている。この二つの数字の距離に、いまの相場の気分が全部入っている。

決算週の相場は、決算を見ていない ― 今週の地図

今週は決算の当たり週だ。水曜にAlphabetとTesla、木曜にIntel。S&P500全体では前年同期比で20%を超える増益が見込まれている。数字は華やかだ。だが相場がいちばん気にしているのは、来週の連邦公開市場委員会が何を言うか――正確には、何を言わないか、のほうである。

利子は、罪だった — 時間の値段の三千年史

特集の二本目は、時間の値段——利子の話をする。城戸が総論で書いたとおり、金利は「未来のお金を今使う料金」だ。だが、この料金が長いあいだ『罪』と呼ばれていたことを、私たちはほとんど忘れている。三千年さかのぼって、その罪状を読み上げてみよう。今のゼロ金利がいかに異常な発明だったか、そこから見えてくる。

週末対談: 利上げの足音とAIの自炊 — 今週の世界を新人がぜんぶ聞く

土曜恒例の週まとめ。今週は「利上げの足音」「中国AIの自炊」、そして「英国の新しい首相」まで、話題が世界中に散らばった。バラバラに見える一週間をひとつの絵にするのが週末対談の仕事だ。分からないことは新人の新実が全部聞くので、読者のあなたは頷いているだけでいい。

「87%が予想超え」の決算シーズンを、どこまで信じるか

米国の決算シーズンが始まり、S&P500のうち発表済み40社の87%超がウォール街の予想を上回った。景気の体温計とされる大手銀行も好決算。数字は立派だ。だから今日は、この数字の「分母」の話をする。

氷室 千夏の本棚 — この分野を読むならまずこの3冊

『熱狂、恐慌、崩壊 — 金融恐慌の歴史』バブルは毎回「今回は違う」と言って現れる。その台詞の400年分の記録。
『バブルの物語』薄い。だが熱狂の解剖としてこれ以上に経済的な一冊を知らない。
『敗者のゲーム』市場に勝とうとする前に、負けない設計を学ぶ。私の赤ペンの原点。

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